「時に梶」 「はい?」 「弥鱈立会人との交際は順調かな?」 「わーーーーーーーーーッッッッ!!!!!」 「…大丈夫?」 「すみません、びっくりしちゃって…あ〜本が…」 「驚かせてすまない。最近気になっていたから、いい機会だと思って聞きたかったんだよね」 「は、はぁ」 「で、続きだけど、彼とは仲良くしてるの?」 「それは…まぁ、仲良くお付き合いさせてもらってますけど…」 「そうか。最近は二人でどこかに行った?」 「あー…最近は弥鱈さ…立会人の立会いが続いてるので、あまり出かけたりはしてないですね」 「なるほど。二人の時間は取れてる?」 「それは大丈夫ですけど…何か弥鱈立会人の事で問題でもあったんですか?」 「いや?立会人と会員の交際は初めて聞くから、気になって」 「あ、あれですか、賭郎としては立会業務に集中してほしいから、あまり深入りするなっていう…?」 「いや、そんなことはないよ。それだったら、仲良くしてるのかなんて聞くだけ無駄じゃないか。それに、聞く前にこちらから対処したほうが諸々早いだろう」 「そうなんですけど、聞くだけ聞いた後に「申し訳ないんだが」みたいな感じで、たたき落とすこともあり得るじゃないですか」 「可能性としてはあり得るね。まあ、今回は違うけど」 「それならよかったです。なんか、今までの癖でつい可能性を考えちゃって…」 「それはしょうがない。まぁとにかく、君たちの仲に口出ししたいわけじゃないから安心して」 「は、はい」 「立会人と会員の仲が良好なことは良いことだ。この殺伐とした中で、仲睦まじい関係を築くことは大変なこともあるだろうから、何か力になれることがあったらいつでも相談してくれて構わないからね」 「あ、ありがとうございます…」
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「もしもし」 「あれ、悠助さん!お疲れ様です!」 「お疲れ様です」 「もう立会い終わったんですか?」 「ええ、たった今終わりました」 「聞いてた予定よりだいぶ早いですね」 「そうですね、私にも予想外でした」 「じゃあ、今から帰ってこれるんです?」 「それなんですが」 「はい?」 「実はイレギュラーな事態が起こりまして」 「イレギュラー?」 「今私だいぶびっくりしてるんですが」 「全然びっくりしてるように聞こえないですけど」 「でしょうね。で、今日の夕食の準備ってどうなってます?」 「夕食?まだ作ってないですよ。今日は鍋の予定だったんで、もうちょっと後で作る予定でした」 「なるほど。ちょうどよかった」 「え?」 「その鍋の予定を別日に変えていただきたくて」 「何か予定が入ったんですか?」 「結果から話します。先程黒い方のお屋形様から、ホテルレストランでのディナーを用意していただきました」 「...ディナー?賭郎内で懇親会でもあるんですか?」 「違いますよ。私達二人だけです」 「……僕達、だけ?」 「予約が今から1時間後らしく、今私が家に帰るまでに隆臣に出発の準備を整えてもらって、私が車で拾って行けばちょうど間に合う計算なんです」 「ちょ、ちょっと待ってください?なんですか急に!?」 「そうなりますよね?」 「そりゃなりますよ!」 「で、これがお屋形様直々のご連絡だって言ったらどうなります?」 「はぇ…?」 「ってなりますよね?私も全く同じ状況なんですよ」 「その話し方だと全然説得力ないんですけど...ちなみに場所は?」 「ザ・リッ⚪︎・カールト⚪︎東京」 「............は?」 「詳しい事は後で話します。私は今から車に乗るんで、一旦電話切りますよ」 「えっちょっ待って!これ強制なんですか!?」 「お屋形様からのご招待ですよ?」 「でもいきなりじゃないですか!」 「でも、私達2人で行けるじゃないですか。何をそんなカリカリしてるんです?」 「そうじゃなくて〜〜〜〜〜〜〜〜あーもう!考えたってどうにもならないですよね!わかりましたよ!で?!服装ってどうすればいいんですか?!」 「基本スーツに無地の長袖とかでいいんじゃないですかね」 「あとは何すればいいですか!!」 「準備できたら駐車場で待っててください。あと20分ぐらいで着くと思います。それではまた後で」 「あっちょッ!...なんなんだよもう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜...もういいや、準備しよ...」
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「悠助さん!おかえりなさい」 「ただいま…って言っても、また出かけるんですけどね」 「そうですよ!で、どういうことなんです?これ?」 「まぁ、まずは乗ってください」
「で?どういう事なんですか?」 「私にもよくわからないんですよねぇ〜」 「え?」 「今日の立会い、取り立てもあと1時間もあれば片付くだろうと算段をつけていたところに、お屋形様から私の社内用携帯に電話が入ったんです」 「創一さんから?」 「はい。で、『いつもよく動いてくれている弥鱈立会人には感謝している。そのお礼としてぜひ行ってほしいところがある。銅寺立会人に招待状を渡しておいたから、それを受け取ってほしい』とだけ言われて切れたんです」 「何それ…」 「で、電話が切れてすぐ、目の前に銅時立会人が立っていて」 「ヒッ…」 「銅寺立会人の手には封筒があり、この封筒を受け取ったら1時間後に中に書かれている場所に行くことと、あとの取り立ては自分が担当を変わると言って私に渡してきたんです」 「…で、中に入ってたのが」 「ザ・リ⚪︎ツ・カール⚪︎ン東京でのディナーチケットでした。しかもペア」 「う、嘘だ〜〜〜〜」 「実物どうぞ」 「あ、あぁ…」
「うわぁ…本物だ…」 「一体なんなんでしょうねぇ〜」 「あれ、なんか手紙?が入ってますよ」 「ああ、それですが」 「え…」 「読みました?」 「読みました…」 「そういうことです」 「いや???そういうことですじゃなくて???一週間休みってなんですか????」 「一週間休みってことですよ」 「じゃなくて!突然一週間休みって?!なんで!?」 「私の働きが評価されたってことでしょう」 「…」 「…なんだか釈然としない反応ですね」 「だって、なんか突然すぎてどう反応していいか困りません?」 「賭郎では突然すぎることなんて日常茶飯事です」 「まぁ、そうでしょうけど…」 「嬉しくないんですか?せっかく一週間も一緒に過ごせるのに」 「そりゃあ、嬉しいですよ」 「なら問題ないじゃないですか」 「そうですね…」
「あなたのその反応」 「…はい?」 「さっき電話で怒ってたことに関係してますか?」 「…はい?」 「お屋形様からの招待の話した時、妙に怒ってたじゃないですか」 「...怒ってません」 「怒ってましたよ」 「怒ってません」 「最後の方半分怒鳴ってたじゃないですか」 「怒鳴ってません!」 「何か気に食わなかったんですか?」 「なんでもないです」 「じゃあ、何故怒ってるんです?」 「怒ってないですって」 「…」
「え、なんで車止めるんですか」 「隆臣が怒ってる理由を教えていただかないと、行く意味無いでしょう」 「そんな、別に気にしなくていいですよ」 「あなたが「別に」って言うときは、大体「言ってもしょうがない」って思ってるときです」 「…」 「隆臣」 「…」 「あなたより優先することなんて無いんですよ」 「…今日、鍋、作る予定だったんです。悠助さんが食べたいって言ってたやつ…」 「覚えててくれたんですね」 「当たり前じゃないですか!ずっと楽しみにしてたんですよ!一緒に食べるんだって! なのに!!」 「…」 「なんだよいきなり、ザ・⚪︎ッツ・カ⚪︎ルトンて…そんな高級なところに僕が用意した鍋なんて敵わないよ…」 「そんなことないですけどねぇ〜」 「しかも一週間の休み?!なんだよいきなり!権力見せつけてきて!僕らの事、力になるとか言ってたのに...」 「…隆臣」 「なんですか!」 「今すぐにでも家に帰って一緒に鍋を食べたいですが」 「…」 「その姿のあなたとディナーするのも捨て難いなと思ってしまって」 「へ?...あ、これ?」 「なかなかこんなシチュエーションないですし、いつもと違う姿、正直グッときてまして」 「…」 「私のわがままに付き合ってもらえたら嬉しいんですが」 「…わがままって?」 「あなたをエスコートさせてください」 「…」 「どうです?」 「〜〜〜〜〜〜このスパダリ立会人め〜〜〜〜〜〜〜〜」 「お褒めいただきありがとうございます。で、返事は?」 「行く!」 「ありがとうございます〜〜〜では出発〜〜」